編集のお手伝いをさせていただいた本
「わたし〝前例〟をつくります」が発売になりました。
この本は、わたしにとって忘れられない一冊となりました。
本の著者は、青野浩美さんというひとりの声楽家です。
でも彼女は、ほかの声楽家と決定的に違うところがひとつあります。
気管切開している、というところです。
ふつう、気管切開したら、歌はもちろん、話すことすらできないというのが通説です。
なのに青野さんは、きれいなソプラノで歌うんです。
気管切開した人がつける「カニューレ」という器具をのどに入れたままで。
その重大さを知っている人は、青野さんが歌う姿を見て、「信じられない…」と言います。
青野さんと何度も打ち合わせをし、いっしょになって本をつくっていきました。
彼女が伝えたかったのは、
「医学の常識の前に、可能性をあきらめないで」ということ、そして
「医者ではない人が行う『医療的ケア』がもっと広がれば、障害があっても夢を追うことができる」
ということです。
これを伝えるために、どんな本にしようか、というところから話し合っていきました。
にしても、青野さんは、本当に元気ハツラツな人でした。
会ったその日から、関西独特のノリで突っ込んでくるし、
まあよくしゃべる。
彼女と話している時間は、楽しかったし、深かったです。
でも、そんな明るい一面の裏側にはさまざまな山谷があり、
彼女はそれを、泣きながら乗り越えたこともあります。
その半生は、「前例がないからできない」「自分にはムリだ」
と、いろいろなことをあきらめかけている人に、
「あきらめずに、一回やってみたら?前例がないなら、つくったらええやん」
と語りかけてくれます。
前例がないなら、つくればいい。
この考え方が、気管切開した人が歌えた例はない、と医師から宣告された彼女に、
ふたたび声をもたらしました。
彼女はいま、プロの声楽家として活躍しています。
その生き方は、いろいろな人に元気をもたらしてくれます。
あきらめたくないけど、いろいろな事情でくじけそうになってしまっている方。
ぜひ読んでみてください。