大阪のライター オフィス「おふぃす・ともとも」代表ブログ

大阪在住のライター高野朋美(おふぃす・ともとも代表)です。最新の実績、仕事への思いなどもご紹介。

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言いたいことが一つしかない場合

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ロングインタビューをしていて、たまに「この方の言いたいことは一つしかない」と思うことがあります。
文字数にすると、ほんの400字程度。中身がないということではなく、その逆で、とてもシンプルなことの中に、真理が凝縮している場合、こういうことが起きます。

さて、こんなとき、ライターとしてはちょっと困ります。
インタビューを数千文字でまとめなければならないのに、400字で終わってしまっては、お金をいただける仕事にはなりません。
そんなときはどうするか。私は編集者さんに「三人称で書かせてください」とお願いしています。

文章には、インタビュー対象者が語っているように書く「一人称」の文章と、第三者が語っているかのように書く「三人称」の文章があります。
言いたいことが一つしかないような方の場合は、一人称で書いてしまうと、少ない文字数で終わってしまいます。長い人生の中で磨き上げ、無駄を削ぎ落としてきた「短いけれど含蓄のある言葉」以外、その方の語りたいことはないからです。

でも三人称なら、書き手であるこちらの心の変化を文章に落としこむことができます。例えば、「Aさんはなぜこんなシンプルなことを重視するようになったのか。その理由を探すために、おいたちまでさかのぼってみる」というように。

人物インタビューは、ちょっとした小旅行だと思っています。旅している間に、思ってもいない景色が見えたり、こっちの道だと思って進んだら、全然違うところに出てしまったり。そういう「想定外の面白さ」があります。

インタビューで想定外が出てきたとき、私はがぜん楽しくなります。「この方は、なぜそんなふうに考えたのだろう。その理由や背景は何だろう」。そう思い始めると、その方の人生にどんどん入っていきたくなる。質問をしながら、返ってくる答えを自分なりに理解しながら、インタビューを進めていきます。

言葉の少ない方の場合は、質問をしても、なかなか多くを語ってくださらないことがあります。でも、その言葉の裏にある思いや考え方を、想像することはできる。こうではないだろうか、ああではないだろうかと。
それが、三人称の文章を書くとき、生きてくるのです。

想像力の翼は、たくさんの人とお話しし、語り合い、その人の気持ちを理解しようとするところに生まれます。
私は、想像力の翼を広げるのがとても楽しい。正しく翼を広げるために、もっとたくさんの人とお会いし、話したいと思っています。

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自分が守るべきもの



電車の中吊り広告でふと見つけたフレーズが、とても好きになりました。
後日、このフレーズが何なのか、ある本屋さんの取材によって明らかになります。

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ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難かしくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

(中略)

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
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茨木のり子さんという詩人の詩でした。

人間は身勝手な生き物なので、いつも「自分こそが正しい」と思っています。
私もそう。
自分の考えは正しくて、それと違った考えは間違っている、と思い込んでいます。
でも、その思い込みにとらわれると、自分がどんどん怠惰になっていくのが分かります。

正しいから、努力をしなくていい。
正しいから、考えなくていい。
正しいから、検証しなくていい。

このように、自分は何もしない。それなのに、自分以外を否定したり非難したりし始める。
最低ですよね(笑)。
この最低なスパイラルに、自分が陥っていることに、たまに気付かされます。
その気づきをもたらしてくれるのが、さっきの詩です。

自分の感受性くらい、自分で守れ、ばかもの!

本当にそうです。
自分の人生くらい、自分でつくっていかないで、どうするのか。
この詩を見るたびに、そんな自問自答をしています。

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