大阪のライター オフィス「おふぃす・ともとも」代表ブログ

大阪在住のライター高野朋美(おふぃす・ともとも代表)です。最新の実績、仕事への思いなどもご紹介。

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十を聞いて一を書け

「十を聞いて一を書け」
新聞記者だったころ、キャリア20年以上の先輩に教わった言葉がこれです。
厚みのある記事を書くには、取材で情報を十分に集めなければならない、という意味です。

取材とは、字の通り「材料を取りに行く」ことです。
文章を書くための材料を取得するため、人に話を聞きに行きます。
その際、あらかじめ質問項目を作っていくのですが、ライター経験の浅い人、あるいは取材経験のない人は、質問項目通りの「一問一答」で終わってしまうことがよくあります。

例えて言うなら、「大根はありますか?」と相手に聞いて、「はい。これです。どうぞ」と差し出された大根をそのままもらってくるのが「一問一答」です。
一問一答の取材も、間違ってはいません。
しかし、経験を積んだライターは、さらにここから質問を広げていきます。

例えば、その大根がスーパーで売られているような葉なし大根なら、「葉っぱがないのはどうしてでしょうか」と聞きます。
ぶつ切りにされていたら「なぜぶつ切りにされたのですか?」と問いかけます。
泥がついていたら「どうして泥付きのままなのですか」とすかさず質問します。
なぜ?どうして?と疑問を持つことで、質問がどんどん広がっていき、結果として十を聞き出すことができます。

取材のうまい人は、この「疑問力」がしっかり身に付いています。
気づき力とも、質問力とも言い替えることができます。
では、疑問力はどうすれば身に付くのか。
私は、相手の立場にどれだけ立とうとするかがカギではないかと思っています。

自分が相手だったら、どうするだろう。どう考えるだろう。
こんなとき、どんな行動をするのだろう。
それが疑問力の種になります。
「私だったら、大根を葉っぱ付きで出すのに、この人はどうしてぶつ切りにして出してくるんだろう」
そんなふうに考えると、おのずと疑問がわいてきます。
それをそのまま、相手に質問としてぶつけると、「実は…」という新たな話が出てきたりします。
こうした話が、記事に厚みを持たせる情報として、原稿を書くときに活かされるのです。

取材とは「思いやり」ではないかと思うことがあります。
相手の気持ちに配慮する、という意味ではありません。
「思い」を「やる」、つまり相手の立場に立って考えてみるということです。
そうすれば、より突っ込んだ質問が自分の中に芽生えてくると思います。

さらに経験を積んだライターになってくると、取材の最中、相手の立場に立つことはもちろん、読者の立場にも立てるようになります。
読者に分かりやすく伝えるためには、どんな質問をしなければならないか、どんな情報が必要なのかというところまで思いを巡らせることができます。
そこまでできるようになると、取材が終わるころには、自分の中に原稿の構成まですっかり出来上がっている、という状態になります。

取材も文章も、一朝一夕でうまくなるものではありません。
ですが、時間をかければうまくなる、というものでもありません。
大切なのは、常に自分に問いかけ、話す人の立場、読む人の立場に立つこと。
考え続ける取材こそが、「十を聞いて一を書け」を叶えてくれるのだと思います。

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